陳式太極拳とは
太極拳とは陰陽合徳 天地自然の理法に則った 錬気の術である
その実践は 陰陽を養い 太極の本源「道」に 帰することにある
-太極道交会 山口博永道長-
伝統拳と制定拳の源
陳式太極拳は、楊式、呉式、武式、孫式などの各派伝統太極拳の源流に位置する最も古い太極拳です。
現在世界各国に普及している「簡化24式太極拳」は競技と健康法に特化した制定拳(中国政府の指示によって新たに制定された太極拳)であり、伝統楊式太極 拳を簡略化して作られたものです。
「簡化24式太極拳」から見れば「楊式」が親、「陳式」はお祖父さんのような位置づけとなります。
陳氏武術の発祥と分派
陳式太極拳は、中国河南省陳家溝という村で生まれました。約400年前、陳家溝に代々暮らす陳氏一族の第九代 陳王庭祖師が、一族に伝わる武術を陰陽太極理論に基いてまとめ直したものがその始まりだったと言われています。
その後陳式太極拳は陳氏一族内で伝承されていき、その過程で従来の大架(=老架)から初めに小架、続いて新架が枝分か れし、また小架からは趙保架と忽雷架が生じるなど、陳式の中でも分派が生まれていきます。
そして現在から見ておよそ180年前、陳家溝を訪問して陳式大架を学んだ楊露禅老師という達人が楊式太極拳を創始・公 開したことで、初めて「太極拳」という名の武術は世の人の目に広く触れる事となりました。
後には、楊式を学んだ呉全佑老師、楊式と陳式趙保架を学んだ武禹襄老師、孫禄堂老師、和兆元老師といった、いずれ劣ら ぬ名師たちが呉式、武式、孫式、和式太極拳を創始されるなど、陳式に端を発した伝統太極拳の世界は大きく広がって行きま した。
さらに楊式の流れとは別に、北京にあって"拳聖"と称された陳発科大師、その技を受け継いで陳式心意混元太極拳を創始 された馮志強老師により、陳式太極拳も一層の発展を見せています。
陳式太極拳の特徴と練習体系
陳式太極拳には複数の架式(=スタイル)がありますが、全般に、纏絲と呼ばれるねじりの運動を介して全身の力を一つに 束ねて用いるという特徴があります。
一般的な太極拳のイメージにあるような、柔らかな動き、ゆっくりとした一定のペース、静かな力の発し方だけでなく、鋭 く素早い動き、足に一気に体重を落とす震脚と呼ばれる踏み込み、矢を射るような剛的な発勁、なども含まれています。
陳式太極拳は多くの中国武術と同じく、套路と呼ばれる型の稽古を重視しています。陳式の套路には一路と二路の2つがあ り、まず一路を繰り返し練り、その上で二路に進みます。さらに剣、刀、槍などの各種武器術も併修するのが昔ながらの練習 法です。
套路の一路は基本的な要素を全て備えているため、外形、内気、意念、用法など目的を徐々に変え、何度も繰り返し練習し
ていきます。
対して二路は、体を震わせるような発勁や震脚、跳躍動作など、剛猛な動きを多く含んでおり、その雰囲気を大事にして練習
をします。
また武器術ですが、素手の技と共通の動きで成り立っており、武器を手の延長として扱えるように訓練をします。
套路、武器術に加えて基本功(基本動作の反復練習、呼吸法や気功を含む)、推手を練習することで、心身が鍛えられ、武 術としての技を高める事が出来ます。
さらに続けていくことで陰陽太極理論に則った運動が身に馴染み、自然の法則と自らの心身を一体とした境地、「太極の気 象」に入る事ができると言われています。
太極道交会においては、太極拳は単なる健康法、運動競技、護身術ではなく、練習を重ねることで「太極の気象」に入り、 「自己の確立」と「自他の和合」という二大尊厳を得て、太極の本源「道」に帰するための手段であると教えられておりま す。